石狩川水系・夕張川支川の幌向川下流域は、宅地開発が進み、人口と資産の集積が著しい地域です。しかし過去、幾度となく水害に見舞われ、昭和56年洪水では大規模な浸水被害を受けました。幌向川周辺は泥炭性の軟弱地盤が広く分布し、堤防の安全性の確保が緊急的な課題であることから、平成15年度に緊急対策特定区間に設定し、堤防の完成化を図ることで、洪水に対する安全性を向上させます。堤防は軟弱地盤に対応した安定性を確保するため、堤内側に引堤を行い、さらに緩傾斜としています。

 
 

幌向川築堤の引堤(札幌開発建設部蔵)

 


昭和56年洪水時の豊幌地区(札幌開発建設部蔵)

平成20年の豊幌地区。堤防の完成化で、昭和56年洪水が発生しても浸水被害は軽減(石狩川振興財団蔵)

 
   
 

 札幌市を貫流する豊平川は、大都市を流れる河川としては全国有数の急流河川です。そのため、洪水時には流れが高速で乱れたものになり、河岸や河床の洗掘等を引き起こし、堤防の安全が損なわれるおそれがあります。氾濫域には、札幌市の中心市街地が広がっていることから、ひとたび破堤・氾濫した場合には、甚大な被害が発生するほか、都市機能を麻痺させるおそれがあります。このため堤防の洗掘・侵食対策として堤脚保護護岸を実施し治水安全度を高めています。
 また、急流河川の河道安定化のため設置された床止は、設置から約50年が経過し老朽化による破損等が確認されていることから、改築等が行われています。下流の堤防整備では、札幌市が進めている「東雁来第2土地区画整理事業」と連携し、盛土による堤防強化対策が進められ、洪水に対する安全性の確保とともに、まちづくりと一体となった水と緑豊かな都市生活空間が形成されます。

 
 

◎豊平川堤防強化対策

 

◎雁来築堤堤防強化事業と東雁来第2土地区画整理事業

 
     
   
 

 石狩川流域では、出水時には緊急復旧や水防活動の拠点、地震時には避難場所あるいは支援活動の拠点や物資輸送基地となり、平常時には防災訓練やコミュニティースペースとして活用できる、河川防災ステーションの整備が市町村と連携して進められています。

 
   
   
 

 千歳川流域は、中下流部に広大な低平地があり、ほぼ2年に1回は水害に見舞われていました。
 昭和50年、昭和56年洪水を契機に、千歳川の洪水時の水位を大幅に下げるため、石狩川の高い水位を水門で断ち、千歳川の洪水を放水路により直接太平洋へ放流する、「千歳川放水路」計画が決定しましたが、さまざまな意見が寄せられ、道知事からの意見を踏まえ同計画は中止されました。そして、千歳川流域の治水対策の緊急性、実行可能性や早期の効果発現等を勘案し、新たな治水対策として、「堤防強化(遊水地併用)案」が策定されました。現在、千歳川流域では、堤防整備とともに、流域4市2町の千歳川本支川の地先に、概ね5千万の容量の遊水地群の整備が進められています。
  進捗が早い長沼町嶮淵右岸地区遊水地は、平成21年9月の集中豪雨や昨年9月の台風12号で水位が上昇した南九号川の洪水を緊急通水して、浸水被害を防いでいます。
 また千歳川遊水地群は、札幌近郊の国道等に近接する立地の良さから、普段の利活用も検討されています。

 
 

◎洪水時に石狩川の高い水位の影響を受ける区間の延長

   

◎遊水地群の整備イメージ

 
 
   
             
 

◎既に被害の低減に効果を発揮

     

◎千歳川遊水地群位置図

 
   
   
 

(すべての資料:札幌開発建設部)

 
   
 

 石狩川支川の夕張川上流に建設中の夕張シューパロダムは、現在ある農業・発電用の大夕張ダムを再利用して、多目的ダムとして生まれ変わります。
 夕張川・石狩川下流域は、札幌市や江別市はじめ約200万人が暮らす発展著しい流域で、大規模な雨が降った時に夕張川および石狩川の洪水を調節して暮らしを守ります。さらに河川環境を保全する流量の確保、かんがい用水の補給、水道用水の供給と電力を供給し、水需要や電力供給に応え、流域の安全安心で豊かな暮らしを支えます。
 夕張シューパロダムは完成すると、わが国第2位の湛水面積と第4位の貯水容量というスケールの大きさで、観光資源としての価値も高いため、夕張市の地域振興につながることが期待されています。

 
 

建設中の夕張シューパロダム、大夕張ダムとシューパロ湖(札幌開発建設部蔵)

 
   
 

 茨戸川は、生振捷水路の完成で石狩川から切り離された河跡湖で、過去に急激な人口増加等で生活排水が流れ込み、水質が悪化した時期がありました。これまで浚渫等が行われてきましたが、環境基準の達成には至っていない状況です。一方、札幌市北部地区の小河川は、札幌扇状地の湧き水を水源にしていましたが、市街地化により湧き水はほとんど涸れ、小河川はよどんだ状態になっています。
  茨戸川は平成13年度に国土交通省の進める「第二期水環境改善緊急行動計画(清流ルネッサンス」の計画対象河川に選定され、関係機関と地域住民等からなる「茨戸川清流ルネッサンスU地域協議会」が行動計画書を策定しました。河川事業では、創成川ルート、雁来ルート、石狩川ルートからの導水による水環境整備事業が進められ、地域や関係機関等と連携しながら、茨戸川における水質環境基準BOD3mg/l以下の目標達成と、北部地区河川の水環境の改善を目指しています。

 
   
 

 開拓以前の石狩川下流には、釧路湿原をしのぐ約770の湿原が広がり、湖沼が点在していました。そして近年の河川環境をめぐる意識の高まりを受け、今、この石狩川での自然再生が進められています。
 平成13年、ワンド(入り江のようなよどみ)試験地が造成され、そのデータを基に学識経験者等による検討がつづけられ、平成19年、「石狩川下流自然再生計画書」が策定されました。この計画のなかで、当別川合流点の当別地区が最初の取り組みで重要な拠点になります。
 石狩川右岸当別川合流部地区では、昭和30年代の自然環境を目標に、河岸・湿地・草地の環境および樹林帯を再生します。実施にあたっては、関係機関始めNPOや地域住民からなる「石狩川下流当別地区自然再生ワークショップ」でまとめた実施計画書に基づき、ワークショップで検討確認しながら、連携・協働で進められています。

 
 
   

当別地区の自然再生、目標のイメージ(札幌開発建設部蔵)