石狩川治水促進期成会
60周年を迎えて
     
         
 
石狩川治水促進期成会会長 滝川市長 前 田 康 吉
     
 

 

 石狩川治水促進期成会は、昭和24年の創設以来、ここに記念すべき60周年を迎えました。
 ご承知のとおり、石狩川は、その源を大雪山系の石狩岳に発し、石狩市において日本海に注ぐ日本屈指の大河であります。その流域は、北海道中央部に位置し、石狩、空知、上川管内にまたがる18市27町1村からなり、下流域には道都札幌市をはじめ都市化の進展の著しい道央地域を抱え、今では約313万人が暮らす、北海道における社会、経済、文化の基盤をなしています。
 この広大な石狩川流域において、石狩川治水促進期成会は、昭和24年当時の神部俊郎滝川町長の呼びかけにより、当時の幌加内村以南の34市町村が加入し発足、最大の脅威であった石狩川水系の氾濫を防ぐために、会員市町村が一致団結し、治水事業の促進に向けて関係機関に要請するなど、活発な活動を展開して参りました。
 忘れてはならない大きな出来事として、昭和56年8月、上旬と下旬の2度に亘る豪雨により、この大河は氾濫し、浸水面積延べ67,100ha、被害家屋延べ34,700戸にも及ぶ甚大な被害が発生、3名の尊い命が失われたほか、経済にも大打撃を与える戦後最大の洪水に襲われました。
 これらの経験を踏まえ、石狩川水系では、洪水から生命、財産を守り、地域住民が安心して暮らせるような社会基盤の整備を図ることを基本方針に、治水、利水、環境に関する施策が総合的に展開されてきたところであります。
 このような中、昨年9月に流域を襲った台風12号は、昭和56年洪水の再来かと心配されましたが、この間の治水事業の成果であるダム、放水路、遊水地等が有効に機能し、総合的な洪水調整の役割を果たしたことにより、幸いにも甚大な水害を防ぐことができました。このことは、これまでの官民一体となった取り組みの大きな成果であり、総合的な治水事業の展開に英知を結集された多くの方々の並々ならぬご尽力に、深く敬意と感謝を申し上げる次第であります。
 他方、全国的には災害が多発し、昨年は、東日本大震災という国難というべき大規模災害が発生したことや、昨年の台風12号による集中豪雨の影響により、奈良県十津川村では山腹が崩落し土砂ダムが発生したほか、本年7月の「九州北部豪雨」では最大24時間降水量が507mmという、かつて経験したことがないような豪雨に見舞われ、各地で甚大な被害が発生しております。
 次々と気象の記録を塗り替えるほどの豪雨に見舞われている今日をみると、昭和56年洪水から30年が経過した本流域でも、いつ、その大規模な豪雨・土砂災害に襲われるか、大いなる危機感を抱いています。
 そうした中、千歳川放水路計画に代わり、平成17年に新たな治水対策として千歳川遊水地群の整備や堤防強化による治水事業に着手されたほか、我々の悲願であった北村遊水地が、新規事業採択が困難な中、関係各位のご尽力により採択され、今年度着手されたことは、誠に喜ばしいことであり、これまで流域の発展とその重要性を重んじて汗を流してこられた多くの先人達に対し、心から敬意を表する次第であります。
 この間、石狩川流域では、昭和56年の洪水流量を安全に海へ流すことを目標に、平成19年に策定された石狩川(上流・下流)河川整備計画により整備が進められておりますが、一刻も早い事業完成が望まれる中、幾春別川総合開発事業の検証に時間を要していることは極めて残念なことであり、早期完成を嘆願するところです。
 また、戦後の国策として、北海道総合開発は強力に推進され、北海道開発予算は全国の10%を占めておりましたが、現在では8%程度となっており、社会基盤整備が脆弱な北海道において、必要な公共予算が確保できない状況は、憂慮に堪えないものがあります。
 これから先、地球規模での温暖化が顕著化し、大洪水や大干ばつ、海面上昇など、すべて水の姿で現れると言われています。また、日本でも100年後には年平均気温が4℃上昇すると予測され、北海道が現在の関東の気温となり、全道が穀倉地帯になると言われています。さらに、このまま推移すると、少子高齢化にある日本の人口は急激に減少し、社会全体が縮小すると示唆されるように、我々は急激な変化の時代を生きています。
 石狩川流域に暮らす我々が、 21世紀に向けて何をなすべきかを考えたとき、石狩川本川の洪水対策や支川における内水氾濫対策により、流域に暮らす皆様の安全・安心を目指すことを第一としつつ、日本各地で発生している豪雨・土砂災害にも目を向け、危機感を共有し連携して防災力を強化するなど、これからの時代に対応できる体制を整える必要があります。また、雪が減っても水を蓄えておく仕組み作りや、施設が老朽化したり人口が減少しても、この穀倉地帯が発展できる持続可能な循環型社会を目指すことが、流域における重要な課題であると認識しているところです。
 そのためには、治水事業の整備水準が依然として低い石狩川流域において、一刻も早い抜本的な治水事業の竣工を目指すことはもとより、より豊かで安全な流域の創造を目指し昨年11月に設立した「石狩川流域圏会議」など、水に関わる多様な団体とも連携しながら目指すべき方向性を模索し、流域が一丸となって必要な取り組みを進めることが重要であります。
 本期成会としても、これからの100年に備えて、流域市町村の皆様とともに治水事業促進に向けて積極的に活動して参りますので、引き続き皆様方のご支援とご協力をお願い申し上げる次第です。
 60周年を迎えるにあたり、貴重なご寄稿を賜った各位をはじめ、取りまとめにご尽力いただいた石狩川振興財団ほか関係機関の皆様にも心からの感謝を申し上げ、母なる石狩川が、人々の暮らしに潤いと安らぎを与える存在であり続けることを願い、ごあいさつと致します。