過去の北海道における大洪水時の台風経路図を見ると、2種類に分類される。一つは右曲がり、もう一つは左曲がりである。しかも後者のほうが明らかに被害が大きい。(紫は温帯低気圧に変化後のルート) そもそも、台風のルートはどのように決まるかというと、台風は背が高いので、上空の偏西風の影響を受けやすい。南から北に向かう台風は、当初は貿易風という弱い東風によりゆっくりと北西に進む。しかし、太平洋高気圧の西側で偏西風帯に達すると向きを変えて北東に進む。この向きを変える点を転向点と呼び、転向点を過ぎると台風は偏西風の強い流れにより大幅にスピードアップして、我が国をわずかに1日から2日で通り過ぎていくのが一般的な台風のルートである。 しかし、上空に寒気が入っている場合は、少し違ってくる。上空の寒気は別名「寒冷渦(かんれいうず)」といって、上空の大きな低気圧である。低気圧は反時計回りに回転しているため、この下に台風がくると、台風は反時計回り、つまり左に向きを変えることになる。 |
ところで、上空に寒冷渦が侵入するとその進行方向、つまり東側では寒冷前線を伴った低気圧が発達することは気象の世界では常識であるが、この理由を一般の方に説明するのは大変難しい。 私は、対流圏内の大気の流れを水深の浅い水面上を木の円盤を動かした場合の円盤の前後の水の流れに例えて説明している。サーフィンや水上スキーでは、ボードの先端は必ず上を向いており、後ろの部分は水面下となっていることが多い。これは水と空気の密度差による抵抗の違いによるものと思われる。 寒冷渦は対流圏の真ん中より上、高さにすると5,000mから12,000m付近を通過する。 |
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寒冷前線が石狩川流域を横切っている時に台風が日本の南海上に近づいてくれば大雨となる。さらに、その前線が同じ位置にとどまってしまえば、大雨が継続する。 一方、上空への寒気の侵入がなく、単に台風が通過しただけでは、台風そのものによる雨が降るだけなので、小流域や支川単位で氾濫することはあるが、石狩川のような大河川の流域全体に大雨が降って大洪水となる危険性は低い。 |
台風のルートが右曲がりの場合・・・偏西風の流れは強く、蛇行していない。台風の通過速度も速く同じ箇所で長時間大雨が継続することは少ないが、小流域や支川単位での集中豪雨に注意が必要である。また、風が強く、特に台風の通過ルートの右側に位置する地域では強風への備えが必要である。 台風のルートが左曲がりの場合・・・偏西風が蛇行しており、台風が近づいた時に上空に寒気が侵入しているため、低気圧と寒冷前線も発達し、寒冷前線沿いに強い雨が継続する。昭和56年並みの洪水の危険がある。最近は、気象庁は5日先まで台風のルートを予想しているので、それに注目されたい。 |
平成23年9月の台風12号による洪水の発生を予測し、防災のため気象知識の普及を提案していた神保気象予報士の、気象について楽しく学ぶ講話を開催しています。 ●くわしいことは、石狩川振興財団まで http://ishikari.or.jp/ TEl 011-242-2242 |
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