国土交通省北海道開発局開発監理部

広報室長
 目黒 聖直
 
 
 

 帰国してから10年にもなるが、かつて私は、スウェーデンの日本国大使館に出向していた。その出向期間中には、休暇シーズンを利用して大陸側欧州のいくつかの国に出かけ、いくつかの街を訪れたことがあるが、多くの場合に、街の中の穏やかな川の流れを目の前にして、街歩きの小休止をしたものである。

 欧州の河川は、日本の狭く急峻な国土を流下する河川と対照的に、基本的には広大な平野をゆったりと流れる長大なものである。「ゆったり」と言いながらも、水量が多いからときには圧倒される印象を受けることもあるし、逆に支流となると長大とは言えなくなるものも勿論あるが、いずれにしても、台風シーズンのような大雨の心配もないからだろう、これらゆったりと流れる河川には堤防が築かれているところを見た記憶がない。

 そして、その河川が街に入ってくると、街のちょうど真ん中を横切っていることが多いように感じる。北海道だと、札幌を流れる豊平川や帯広の十勝川にしても、繁華街のはずれのあたりを流れていると言えそうだが、欧州では、喩えるなら、札幌の大通公園を川に置き換えた感じであり、一例を挙げれば古くはドナウ川を挟んでブダとペストという独立した街だったブダペストは、川の両岸で街が同じような大きさに発展している。パリでは、右岸に凱旋門やシャンゼリゼ通り、左岸にはエッフェル塔やカルチェ・ラタン地区などがあることは多くの人が知っていよう。前述した北海道の例、あるいは東京の荒川や大阪の淀川では、主にその片方の岸の側だけに商業地区やビジネス街が広がっているのとは状況が異なる。中州とその両側に街が広がっているような都市を除けば、我が国では、大河が街を均等に分断しているという例というのは殆どないのではないだろうか。

 
 

 

    王宮跡から眺めたブダペスト市街

 

 

 

 

 



ブタペストの街の中心を流れる
大河ドナウ




 以上の結果、どういうことになるのかというと、我が国の特に大きな河川の場合、堤防が街と川を隔てていて、川と堤防の間の敷地(堤外地)は遊歩道や野球場などに利用されているが、欧州の街では、堤防がなく、市街地が中心を流れるその川のすぐそばまで広がっているということ。そのことは、同時に、川の水面と地面の高さがあまり違わないということにもなる。  

 



建物が川岸に接近している例(チューリヒ)

 

 

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